傷病手当金が足りない|元保険屋が本音で選ぶ正解3つ

保険屋だったから言いますが、「傷病手当金があるから大丈夫」と思っている会社員ほど、実際に休職したときの手取り不足に驚くケースが多い。私はAFP・TLCとして通算500名以上の保険相談を受けてきましたが、傷病手当金の不足額を正確に把握していた方は、ほとんどいませんでした。この記事では、傷病手当金が足りない本当の理由と、不足をどう埋めるかを、元・中の人の視点で正直に解説します。

傷病手当金の支給額と、意外と知られていない落とし穴

「月給の3分の2」は額面ベース。手取りに換算すると話が変わる

傷病手当金の計算式は、健康保険法99条に基づき「直近12ヶ月間の標準報酬月額の平均÷30日×2/3」です。つまり、支給の基準になるのは「標準報酬月額」であり、毎月の手取りではありません。

たとえば月収30万円(手取り約23万円)の会社員の場合、傷病手当金は標準報酬月額30万円をもとに計算されます。30万円÷30×2/3=日額6,667円、月額に換算すると約20万円。手取り23万円に対して月3万円の不足が生じます。

さらに傷病手当金は非課税ですが、標準報酬月額が高い人ほど社会保険料(健康保険・厚生年金)が休職中も発生し続ける点を見落としがちです。会社負担分もなくなるわけではなく、本人負担分は引き続き発生します。給付額から社会保険料が差し引かれると、実質手取りはさらに低下することになります。

支給開始までの「待機3日+4日」と、住民税の請求タイミング

傷病手当金には、まず連続した3日間の待機期間があります。その後4日目から支給対象となりますが、実際に振り込まれるまでにはさらに申請・審査の期間があり、最初の給付を受け取るまでに1〜2ヶ月かかるケースも少なくありません。

加えて、休職した翌年には前年の所得をもとに計算された住民税の請求が来ます。休職中は収入が激減しているのに、前年分の住民税を一括または分割で支払う必要があり、これが家計を大きく圧迫します。私が相談を受けた中でも、「住民税の請求が来て初めて資金不足に気づいた」という方が複数いらっしゃいました。

私が500人の相談で見た現場:傷病手当金 不足の実態

一番守られている人が過剰に入り、本当に要る人が来ない「ねじれ」

私が現場で見てきた事実として、就業不能保険の相談に来られる方のほとんどが会社員でした。傷病手当金(健康保険から給料の約2/3・最長1年6ヶ月)でかなりの部分が守られているにもかかわらず、就業不能保険を上乗せで検討される方が大半だったのです。

一方で、本当に就業不能保険が必要な個人事業主やフリーランスの方からの相談は、体感としてほぼゼロに近い状態でした。傷病手当金の制度そのものが存在せず、休業即収入ゼロになるリスクを抱えているはずなのに、相談窓口に来る人は少ない。「一番守られている人が過剰に入り、一番必要な人が入っていない」という構造的なねじれを、現場で何度も目の当たりにしました。

うつ・休職のお金の不安は「計算していないこと」から生まれる

うつや適応障害で休職される方の相談を受けると、多くの方が「どのくらいお金がもらえるのかわからない」という状態で来られます。傷病手当金の計算方法を知らないまま、「足りないかもしれない」という漠然とした不安だけが先走っている。

私が相談の中で傷病手当金の試算を一緒に行うと、「思ったより出るんですね」と安堵される会社員の方と、「これだけしか出ないのか」と青ざめる方の、両方がいらっしゃいました。不安の大きさと実際の不足額は必ずしも一致しない。だからこそ、まず数字で把握することが最初の一歩です。

【元保険営業の本音】「恐怖で買わせる」構造を知ってほしい

就業不能保険は「必要かどうか」より「売りやすいか」で勧められていた

元・保険営業の立場から正直に言います。就業不能保険は、「うつになったら収入がゼロになるかもしれない」という不安を入口にすると、非常に売りやすい商品です。特にコロナ禍以降、精神疾患による休職リスクへの関心が高まり、会社員への提案が急増しました。

しかし現実には、会社員には傷病手当金という強力なセーフティネットがあります。業務外の私傷病であれば傷病手当金の対象となり(業務上・通勤中の傷病は労災保険の領域です)、最長1年6ヶ月にわたって給料の約2/3が支給されます。「傷病手当金では足りない分を就業不能保険で補う」という考え方自体は合理的ですが、不足額を計算せずに「怖いから入る」という判断は、保険料の無駄につながりやすい。

「月3,000円のつもりが気づいたら倍になる」からくりを知ってほしい

私が現場で見てきた事実として、相談者の方が最初に希望する保険料は月5,000円以内、若い方であれば3,000円以内が大多数でした。ところが、担当者が「この特約も」「この上乗せも」と一つずつ説明を加えていくと、最終的には月5,000〜8,000円前後に着地するケースがほとんどでした。

就業不能保険も同様で、「月額10万円の保障では心配」「精神疾患も対象にしたい」「60歳まで継続したい」と条件を積み上げるたびに保険料は上がります。加入前に「不足額はいくらか」を先に計算し、その分だけ保障する、という逆算の発想が大切です。保険は必要な分だけ、冷静に選ぶもの。それが500人の相談を経た私の結論です。

不足額シミュレーションと、就業不能保険で埋める考え方

月収別・傷病手当金 計算の目安と不足額の試算

傷病手当金の手取り不足額を、月収別に大まかに整理します。あくまで目安であり、標準報酬月額の等級や社会保険料額によって個人差があります。詳細はご自身の加入する健康保険組合または協会けんぽに確認してください。

  • 月収25万円(手取り約19万円):傷病手当金の月額目安 約16.7万円 → 不足額 約2〜3万円
  • 月収35万円(手取り約27万円):傷病手当金の月額目安 約23.3万円 → 不足額 約3〜5万円
  • 月収50万円(手取り約38万円):傷病手当金の月額目安 約33.3万円 → 不足額 約5〜7万円

ここに住民税・社会保険料の本人負担分が加わると、実質的な手取りの減少幅はさらに広がります。加えて、家賃・住宅ローン・教育費などの固定支出がある世帯では、半年以上の休職で預貯金が大きく削られるリスクがあります。

就業不能保険は「不足額だけ」買う。重ねすぎは逆効果

就業不能保険(所得補償保険を含む)を検討するなら、保障額の設計は「月の不足額−預貯金で対応できる期間」を基準にするのが筋です。たとえば不足額が月4万円で、半年分は預貯金で対応できるなら、7ヶ月目以降から支給開始の商品を選ぶことで保険料を抑えられます。これを「免責期間」と呼び、長く設定するほど保険料は下がります。

精神疾患(うつ・適応障害など)の保障が含まれるかどうかは商品によって異なります。また、加入後一定期間は精神疾患が対象外となる「不担保期間」が設定されている商品もあります。保険会社・プランによって条件は異なるため、ご自身で複数社をご確認ください。最終的な判断は、個別の事情を踏まえて専門家にご相談される人が多いです。

まとめ:傷病手当金が足りない人が冷静に取るべき3つの行動

元保険屋が伝えたい、備え方の整理

  • まず傷病手当金の支給額を自分で計算する。「なんとなく不安」ではなく、数字で不足額を把握することが出発点。
  • 住民税・社会保険料の本人負担分を忘れずに加算する。額面の2/3が手取りの2/3にはならない。
  • 就業不能保険は「不足額だけ」に絞る。傷病手当金と二重に手厚くする必要はなく、免責期間の設定で保険料を合理的に抑えられる。
  • 個人事業主・フリーランスの方は、傷病手当金がそもそも存在しないため、就業不能保険または所得補償保険の必要性が会社員よりも高い。
  • うつ・休職中のお金の不安は、計算していないことから生まれる。感情ではなく数字で判断する習慣が、過不足のない備えにつながる。

自分で複数社を比較するのが大変なら、無料相談を使い倒してください

傷病手当金の不足額を把握した上で、就業不能保険や所得補償保険を複数社で比較するのは、一人でやると想像以上に手間がかかります。保険料・免責期間・精神疾患の取り扱い・支給期間の上限など、比較しておきたい軸が多岐にわたるからです。

私が現場で見てきた中で、複数社の資料を自力で取り寄せて比較検討してくる方は相談者の中でも一握りでした。多くの方は「何を比べればいいかわからない」という状態からスタートします。だからこそ、複数の保険会社を横断的に扱う無料相談窓口を使うことは、時間とエネルギーの節約として理にかなっています。販売・勧誘目的ではなく、「整理のための場」として活用する視点で使うとよいでしょう。

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筆者:Christopher/AFP・宅地建物取引士・TLC。大手生命保険会社2年、総合保険代理店3年を経て、通算500名以上の保険相談を担当。保険を「売る側」だった元・中の人として、相談者目線の本音を中立の立場で発信している。

Christopher(クリストファー)

株式会社VanceTrunk 代表取締役/AFP(日本FP協会認定)/宅地建物取引士

保険相談の現場で500人以上の相談に対応してきた実務経験をもとに執筆


【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。

【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆

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